かなたの雑感記録

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ノーベル文学賞 カズオ・イシグロ 読書感想文

今回のテーマは、読書感想文です。

 

昨年、ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏の著書

「わたしを離さないで」を読みました。

 

 

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

 

 

 

昨年末、仕事に忙殺されて疲れ切っていた時に

思い立って本屋に立ち寄って購入し

3日ほどで一気に読み上げました。

 

この小説の感想を一言で言うと

社会の不条理を痛感させられる小説だと思いました。

 

クローン人間の人間らしい青春、生活、恋愛模様を描き

読者がすっかり登場人物たちに感情移入をした後に

彼らが臓器提供者としての使命を全うし死んでいく様子が描かれており

悲しい運命に、絶望させられます。

 

クローン人間を題材にしているので

SFチックな非現実的なお話に見えますが

人間らしい青春、生活、恋愛を

社会の不条理によって奪われ、命を失っている人は

現代社会にもたくさんいるので

別世界の話とは思えませんでした。

 

そんな社会派の作品だからこそ、

ノーベル賞を受賞したのかなとも思いました。

 

もう一つ

この小説が素晴らしかったこととしては

登場人物の心理描写が挙げられると思います。

 

この作者は

本当に男なのだろうか?と疑いたくなる程

女性たちの心理描写がリアルで絶妙でした。

 

嫉妬、虚栄、憶測、忖度…と女のネガティブな感情を

事細かく丁寧に描いていたのが印象的でした。

 

その中でも一番心に残っているのは

主人公キャシーが自分で自分の心を欺き続けていた事実です。

 

物語は、キャシーの目線で

一人称で語られています。

 

登場人物の核となるのは

主人公のキャシーと

その親友のルース

そして、ルースの恋人トミーです。

 

前半、キャシーの語りの中では

決してキャシーのトミーへの好意

トミーのキャシーへの好意については言及されません。

 

 

それでも読者からは、

キャシーやトミーの本心が透けて見えるし

その二人を引き裂こうとするルースの本心も見えてきます。

決して、キャシーはそんなことには言及はしないのに。

 

一人称で語られる小説で

その語り手が伝える

「事実」と、その「事実」に対する「解釈」が

どうにも真実とはかけ離れているように見える

という感覚を初めて感じたのは

夏目漱石の「こころ」を読んだ時でした。

 

その時にも似た感覚が

この小説の三人を取り巻く「事実」と

それを語るキャシーの「解釈」から

呼び起こされました。